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東京リアルプレイステーション (プレイヤー:町田満貴)



町田満貴は何もかもに退屈していた。
家族のこと、学校のこと、このつまらない日常には全く飽き飽きだった。
自分はそこそこいい家に生まれて、落ち目とはいっても一応は先進国の首都の真ん中で、欲しいものはいくらでも手に入るご身分だ。
周りのバカどもの間では、勉強せずともいくらでもトップに君臨できたし、それはこれからも永遠に続くだろう。
何不自由なく暮らす少年。
世間は自分を満たされているようと思うだろうか?

クズが。
そんなはずがないだろう。
何の変化も刺激もスリルもなく過ぎ去る毎日毎日。
これを幸福だと?
くそくらえ。
閉ざされた世界、籠の中で必死で蠢く国民。
少年にはその黒々とした籠の存在を今ならしかと見える。
憐れで愚劣な籠の中の彼らは、一体何のために生きているのだろう?
少年にはそんなものわかりたくなかったし、自分がやがて彼らと同じようになっていくのを思うと、身震いするほど憎たらしかった。
餌に群がる蟻を思う。

一体このとんでもない閉塞感は…。

夕日はとうに沈み、少年が日々通らされている通学路は光を失って青白い不自然光が灯る。
少年は自分以外に誰もいないはずもないこのアスファルト舗装の歩道から、秒刻みで漆黒に近づいていくオレンジ色の空と雲を見上げる。
思わずこぼれる強欲にして無垢なる願い。

ああ、誰か僕を解放してください…

この退屈から…!この日常から…!この平安から…!
こんなものもうたくさんです。
ちっともいらないんです。
僕が欲しいのは、本当に欲しかったのは……
スリル…

階段からまっさかさまに転げ落ちる時のような、高層ビル工事の落下物を真下から悠々と眺める時のような、信号無視の車に理不尽に跳ね上げられる時のような…
恐怖感、絶望感、そして高揚感、開放を…
僕に、再び、与えてください。

ああ神様、僕は我が侭なんでしょうか?


Welcome to Tokyo Real PlayStation...


「我が侭なんかじゃありません!」
「それは人たる者の正しき姿」
「遺伝子に刻み続けてきた記憶」
「機械と生物を分けうる唯一の要素」
「そう太古の昔から我々は、スリルを求め続けていたじゃありませんか!」
「私たちはあなたのような方々を、ずっとずっと待ち申し上げておりました」
「あなたのような選ばれた方々を…」
「これからも、今までも、永遠に…」
「あなたが求め続けてきた世界」

「ようこそ、東京リアルプレイステーションへ」

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マニアックマンション (プレイヤー:米岡加奈)



ソフト:マニアックマンション 
メーカー:ジャレコ
ASIN:B000068H16
発売日:1988/9/13
機種:ファミリーコンピューター

レベル:イージー プレイヤー:米岡加奈
クリア条件:脱出せよ


米岡加奈は勝利を確信した。
脱出用の車のキーも、条件アイテム複数も、すべて所持している。
あとは青果コーナーの人ごみにまぎれれば、あのババアの目はくらませられる。
レジさえ越えれば出口は目の前だ。

「今の見たでしょ!マスター!!大丈夫!絶対にいける!!私こそ!私こそマスターに初勝利をプレゼントする者だった!違う!?」
鮮魚コーナーを激走するブレザー姿の少女の息切れ気味の勝利宣言を、マスターと呼ばれた男はヘッドホンとモニター越しから確認する。
「まだゲームは終わってない。あまり興奮するな」
男はそう言いつつ、求め続けてきた初勝利を目前として、自分も冷静でいられるはずもなかった。
確かにこれはチャンスだ。
加奈の足ならこのレベルイージーで適う相手は存在しないはず。
これは自分が何百と駆け抜けてきた勝利の方程式に見事に当てはまる道。
ただ…

米岡加奈は勝利の高揚とほてりの中、このウィニングランを存分に味わっていた。
思えば楽なミッションだった。
レベルイージーなのだから当然だが、やはりマスターに初めての勝利を捧げる唯一の存在となるのは、なかなか悪くない気分だ。
前のチームの反対を押し切ってこのマスターの元に奔った価値は、やっぱりこうでなければ味わえない。
マスターの顔はどこぞのアイドルやら俳優やらよりよっぽどかっこよろしく、加奈の好みにどんぴしゃだった。
初勝利のご褒美はもう決まっている。
加奈はそれを考えただけでも浮かれてしまうのだ。
次々と休日で込み合う邪魔でのろけた客を張り倒しながら走る。
主婦の悲鳴も知ったこっちゃない。

昨今都市の郊外にぞくぞくと進出しているこの外資系大型スーパーの外観は、太陽をさんさんと受け取るための大げさなガラス張りが接着された、白を基調とする長方形の平たい箱だった。
それを灰色のアスファルトの箱の何倍広いかわからないほどの駐車場がくるりと取り囲み、マッチ箱のような車がその上に点々と整列していた。
加奈は今朝ミッションのためにこのスーパーに送られた。
ソフトは少女の最も得意とする脱出アドベンチャー系だった。
「『マニアックマンション』。1988年発売の脱出アドベンチャー。これは加奈、お前にとってはかなり有利だ。県記録持ってるご自慢の足を存分に使えるじゃないか」
マスターはそう言ってくれた。
「ただうちの状況を考えてみろ。今までのゲームでどれだけよそからやられたか。想定外の邪魔が入る可能性が高い。油断はするな」
マスター、見ててください!
私は油断なんかしません!
あの馬鹿どもとは出来が違うんです!
あんなババア相手でもこんなにがんばってる!
加奈はくるりと後ろを向きあの負け犬ババアを探した。
ババアは影も見えなくなっていた。はは。

イージーレベルでは出てくる敵もレベルが低くて当然だが、あのババアは中でも笑える。
ゲーム開始から敵まるわかりで追いかけてきたどぎついピンク色のトレーナーを着ためがねおばさん。
うざいんだよ、馬鹿。
敵は他にも何匹か出てきたっぽいが、コイツの印象が濃すぎて忘れてしまった。
死人に口無しっていうしね。
さあさレジが見えてきたじゃない。
あとはあの大げさなガラス張りを駆け抜けるだけ。


カチャーン。


音がした。
足を止める。
少年がいた。
いくつくらいの子だろうか、おそらく小学生なのだろう。
その少年が今さっき目の前に飛び込んできたことだけはわかる。
少年は倒れこんでいた。
無視しようよ、関係ないよ、走ろうよ、いやどこかおかしいよ。
何この違和感!?

「加奈ー!鍵!車のキー!」

マスターの声ではっとなる。
ブレザーのポケットにあるはずのキーをあわてて探る。

「嘘」

少年は遠くで、無邪気に微笑んでいた。

敵だ。
敵プレイヤー。
やられんだ、こいつに!

「マスター…どうしよう…ないよう…鍵が…盗られて、あいつに投げられたみたい。音遠かったから、もうどこいったか、私わかんない!!」
「加奈!鍵はいい!とにかく今は逃げろ!場所があいつらに丸わかりだ!お前目立ちすぎなんだよ!!」
マスターは声を荒げた。
「わかった…マスター…ゴメンね…本当…」
加奈の声が震える。
どうしよう、マスターに怒られた。
朦朧となる。
いや、それ以上に、恐い…!!
ゲームオーバーが!!
死ぬか!?私が?このレベルイージーで?
いや、そんなことあっていいはずない!

とにかく外へ出よう。
車がなくても、あんなレベルの敵からならいくらでも巻く方法はある。
駐車場の無防備主婦からカージャックするもよし、数キロ離れた場所にはいくらなんでも駅があるはずで、まあそこまで行かずとも、住宅街に逃げ込めば…

「加奈さん」

澄み渡った青空が写りこんだ自動ドアがゆっくりと開いて、人がばらばらと出入りを終えたその向こうで、逆行の中、あのピンク色が不気味に、少女を待っていた。

そんな…どうやって?
疑問符と同時に少女は懐に忍ばせていた短剣をすっくと抜く。
これは殺すための武器。
今、私はこんなババアに邪魔されるわけにはいかない。
マスターに初勝利を捧げるために…。
「加奈!」
「マスター、大丈夫、あんなババアに私が負けるはずが…」
「違う!右の男!」

「え?」

バチン
鈍い音は。

誰かに突き飛ばされたようで、気付けば私は泥やら砂やらでどす黒く汚れた通路に仰向けで倒れていた。
目線を動かすと青い男と赤い女、ああトイレの標識か…
やだなあ、ばっちいトイレの床なんかに寝かされて、髪が汚れちゃうじゃない。
人がわあわあ集まってきて、うるさいんだよ、野次馬ども。
見にくんなよ、見ないでよ、私のこんな姿。
痛いの!痛いの!痛いの!
髪が濡れるの!手も、真っ赤なの!

「早く!誰か!救急車!救急車!」
「女の子が倒れてるんだって!すごい血!」

少女の鮮血がとくとくと床に広がっていく。
少女の長い髪がそれに絡みついて…

「綺麗」
少女をこんな姿にした男は、集まりつつある人ごみの合間からうかがえる、悲惨でエロチックな光景に思わず酔ってしまった。


「マ…スタ…ゴメン…ね…」

「私…告白も…できなかった…」

そう悲鳴にもならない声を発して、米岡加奈はミッションを終えた。


Game Over...


とうとうこの少女の最期の言葉は結局はマスターには届くことはなかった。
例の男が少女に付けられていた通信機器を取り上げてしまったからだ。

「ねえ、どんな気持ち?」
ヘッドホンから聞こえた声は、マスターが最も聞きたくなかった男の声だった。
「いくら払って引き抜いたんだっけ?あれ」
男はそう言ってカメラで人形のようになってしまった少女を見せつけるようにアップで写した。
マスターは思わず目を伏せた。
「ねえ、あと貯金いくら残ってるんの?もう金ヤバイんじゃない?」
「困ったねー。あの伝説のプレイヤーともあろう方が、マスターに昇ったら連敗、破算でプレイヤーに逆戻り?」
「笑えるね」
男の目は笑ってなかった。

「お前こそここに入るのにいくら払ったんだ?」
マスターは怒りで思わず言葉を発す。
「さあ」
男のとぼけた声に怒りが増す。
「ここはイージーレベルだぞ。お前が来るのにいくらいると思ってる。おそらくこのレベルの勝利金の10倍…いや20倍近く…」
「僕のチームはあんたんとこと違って金があるんだよ」

「そうまでして俺の邪魔がしたいか!!」
モニターの向こうの相手に真に叫ぶ。
もう少しだった。
もう少しでクリアだった。
米岡加奈はノーマルレベル以上で対応できる駒だった。
それを使っていくらでも稼げるはずだった。
それを…コイツは…

「あんたもわかってんだろ。恨まれてんだよ、あんた」
「あんたの足引っ張るならいくらでも払うって金持ちが、一体何人いることか」

救急車のサイレンが近づいてくる。
少女を病院へと運んでゆくのだろう。

「もう死んでるのに」
男はくすりと笑った。

「じゃあまた会いましょう、新人マスターさん…」
ぐしゃりとカメラとマイクは踏み潰されて、男は足早に外に出た。
もうすぐ警察がやって来る。

男はスーパーに駐車するには全く似つかわない黒く光るセダンの曲線的な車体のドアを開けると、「退屈な仕事だった」とつぶやいて不満そうに乗り込んだ。
「お疲れさま」
自分は疲れてなどいない。
イージーレベルなのだから当然なのだが、しかしなんと刺激のないこと。
のろまで小うるさい救急車を横目にセダンは走り出した。
町田満貴は退屈だった。
やはりお高くとまったあの男を突き落とし、プレイヤーに、この世界に引き戻してやらねば、この渇きは当分癒されそうにない。

自分を満たしてくれるスリルはもうそこにしかないように思えた。


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