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アンティクリスト (プレイヤー:町田満貴、阿部紗鞠)


「頼む!見逃してくれ!!」

男は闇の中でそう叫んだ。

ひざまづき手をつけたコンクリートは異様に冷たく、遠くの壁に切り裂かれて差し込むだけの電灯は悲しいほど頼りなかった。
スーツはだらしなくへばりつき、ネクタイは地に落ちた。
助けなど望めるはずもなかった。
なにより駐車場はこの時間になれば誰も来ることはない。

自分とこいつら以外は。

「何を恐がってらっしゃる?僕たちはただあなたに事情を聞きに参っただけなのに」

この男は笑っていた。
壁に切り取られた電灯は弱弱しく直線的に男の顔に映って、にやけた顔がわかった。
自分の土下座姿はさぞ面白いものだろう。

「わかってる!わかってるんだ!!上がお怒りなのも!何をどう説明されたかは知らないが、あれは確かに事故だった!俺の責任じゃない!」

そうだ、なぜ、なぜ、俺がこんな目に…
俺はどこからどう誤ってしまったんだろう…。
とにかく今はなんとかこの窮地をくぐり抜け、先へ進まねばならない。

「お前も気持ちはわかるだろう!?」

それには相手の同情を引くのが一番かと思われた。
声は夜の駐車場に響いている。

「わからないな、僕には」

無機質に男は答えた。

困ったことに相手の理解は得られなかったようだ。
いや、むしろ…

「今僕たちにわかったことはどうやらあんたは人種が違うようだ」
男はにじり寄った。

「選ばれたるRPSプレイヤーとは」

男は無慈悲ににその判断を自分に下した。
男の後ろの影も、珍しいものでも見るように、こちらを見ていた。

「あんた、向いてないよ。このゲームに。だから終わりにしてやろう」

男はそう続けるとまた一歩、自分のもとへ、足を近づける。
この男の声はいらだっていた。
同情を請う言葉は逆効果だったようだ。
自身とこの憐れな自分を一緒にされたのが気に喰わなかったらしい。
直線の電灯は男の体をなぞってうごめく。

「待ってくれっ!俺はまだやれる!!次のゲームまで待ってくれ!次なら確実にクリアできる!」
必死で声を張り上げた。

「俺にはまだコンティニューがある…!まだ生きれる!マスターも不用意な俺の処分は許さないはずだ!!」

これはハッタリだった。
自分にはもうただの一つもコンティニューなど残ってなどいなかった。
むしろコンティニューが自分に許されていたなら、マスターも自分をこんな理不尽な処分を下すはずもなかった。
くそくそくそ、なぜだ、あそこまで指揮に尽くした俺がどうして…
「アンティクリスト」を仕向けられるなんて…
あの男は完全に俺を捨てやがった。

とにかくこの嘘はこの場では致し方ないことだった。
なんとしてでも、この状況を終結しなければ…

男の足は思ったとおり止まってくれた。
そう、俺はまだ終わりではない…こんなところで…


「嘘ネ」


女の声は奇妙に響いていった。

「コノ人、嘘ツイテルワ」

声は近づく。

「コノ人ニ、コンティニューナンカモウ残ッテナイワ」

鳥肌が立った。
なんだこの女は…!?

自分はこのゲームというより実験のような擬似戦争を通じて、死線というものは何度も越えてしまったはずだった。
罪悪感、恐怖心、感情など、とうに枯れきってしまっていた。
でも今ふつふつと、嫌な気分が生まれ自分に取り付いてゆく。

この女の声は、耳に恐ろしい。

女の影はゆっくりと男のもとに近づくと、くるりと男の腕に巻いて、こっちを見る。
ここからは暗闇に浮かぶ女の姿が薄っすらではあるが、よく見えた。

女は長く黒く光る髪と猫のような目を持っていた。
その仮面のような顔。
彼女はまったく日本人ではなかった。
アジア人の顔立ちとは明らかに違う。
彫りの深い顔に影がくっきりと分かれ刻まれる。
彼女はまるで人工物のように完全だった。

ああ、こんな美しいものがあったとは。

この女は何人だろうか?
アングロ=サクソン系のようにもラテン系のようにもゲルマン系のようにもノルマン系のようにもケルト系のようにもスラヴ系のようにも見えなかった。
イラン系のようにもトルコ系のようにもアラブ系のようにもユダヤ系のようにも印欧系のようにも見えなかった。
いやもう彼女は何人どころか、人間ですらないのかもしれぬ。
ぞっとするような妄想が生まれるほど、女は奇怪だった。

俺の死神だ…そう思う。

「あなたもわかってますよね。僕たちがここに呼ばれたってワケが」
女を従えた男は晴れやかに言った。

「それはつまりあんたの、『ロスト』だよ」

男の顔は光と影に分かれて、いっそう明らかに映し出された。
男の手に持つ濁白色の銃も今でははっきりと見えた。

だから自分もゆっくりと懐へと手を伸ばす。

「『アンティクリスト』、俺を殺すか?」

覚悟を決める。
声は返ってきた。

「殺ス?違ウ。コレハ解放ヨ」
「恐怖カラノ解放」

この女を黙らせろ。

「戻シテアゲルノ」
「役立タズハ肉片ニ」

この女を撃ちぬけ。

「弱肉強食、敗者淘汰、コレ皆自然ノ摂理ネ」

うるさいうるさいうるさい。
「ならばお前らが先に逝け!!」

女の手には何も武器など持ってはいなかった。
自分が銃を男より先に放てば、まだ勝機はあるはず。
あの「アンティクリスト」から逃げ延びる機会が…!

つんざくような銃声は空に響き渡り、暗闇に不用意に飲み込まれていった。

自分はただ目の前の光景を黙って見ているしかなかった。
そして最期に悟った。
ああ、ここでは俺は狩られるほうの人間だったのだと。
過去あざけり、いたぶり続けた無能者どもと何一つ変わらない存在でしかなかったのだと。
絶対者にとってはあるのは弱者と同等者しかないのだと。


「解放してやろう、お前を」
「ダッテ私タチ、ソレデコソ『アンティクリスト』、救イ主」


「お前はゲームオーバーだ」


● ● ●


銃声が何度か交差し響いたそのビルの駐車場の外では、住民が通報したのだろうかパトカーがポツポツと何台か停まっていた。
何も見つかりはしないのに…そう帰り道をゆく男は勤務を律儀にまっとうしようとする警察を哀れんだ。

銃は嫌いだな、小うるさい。
特にこんな閑静なベッドタウンの一角では、あの音は明らかに目立つ。
誰かがあざとく嗅ぎつける、余計なものまで。
どうせ等しく殺すなら、あんな簡易なものではなく、もっと原始的な、もっと欲情を掻き立てるたてるものであらねばならない。
だから自分は本来刃物を好んだ。

「町田サン」

外灯が夜明け前の青くひんやりとした空気を無意味に照らしている。
街路樹は点々とこの開けた道路をなぞっていく。
二人はそのどこか現実味のしない道を歩いていた。

「退屈ネ」

町田満貴は女のその言葉に笑ってしまった。
それは自分が日ごろ感じていたことだったからだ。

「シャマリは嘘が下手だな」

表情を隠したまま振り返らずにそう言うと、シャマリはまた気に入らないことを言ってしまったのかと少し困ったように満貴を見つめた。
シャマリがこう言ったのは別に日々の仕事がつまらないからでも、満貴のような殺人狂のように血を見たりないわけでもなかった。
シャマリは満貴となんとかコミュニケーションをとりたかったからだった。
だからわざと自分の気になるようなことを言うのだろう。
満貴もそのことくらいはわかっていた。
阿部シャマリが任務で一番困っていたのは、このひねくれた仕事相手とどう接していいものかだった。

二人の間を沈黙が流れた。

男はとうとうしかたなく立ち止まって女のもとに振り返ってしまった。
早朝の青い空気に包み込まれこの女は嫌に幻想的で、ゆるい風はわざとらしくゆっくり女の髪にまとわりついた。

まるで映画のワンシーンみたいだな、と満貴は思った。

この異常なほど美しい女とどう接すればいいのかいつもいらだっていたのは満貴も同じだった。
今でこそ多少見慣れたとはいえ、この女は一度目をやれば離すことが難しいほど、奇怪に美しかった。
最初阿部からこの女を相方として紹介されたとき、驚きを通り越して唖然としてしまったことが思い出される。
何を考えているんだ、こんな日本語も一言もしゃべれない外人女と一緒にやれるかと。
この女を連れて街を歩くだけで悪目立ちして、とても仕事どころではないと。

世の男というものは美女とご一緒することを大変喜ばしいものと認識するだろうが、もう自分にはこの女を自らと関連するものとして受け止めることができなかった。
恋愛対象外と言うのは簡単だったが、彼女は自分にとってもうすでに人間という枠を超えてしまっているといったほうが近いなと満貴は思う。
例えるならミロのヴィーナスやニケの女神とともに歩いている気分だった。

太い眉の下のアーモンド型の潤んだ吸い込まれるような大きく漆黒の瞳を上目づかいに自分に向ける。
その瞳を長く豊富なまつげが隙間なく縁取って飾っている。
ギリシア彫刻のような深い表情。
黄金色の肌。
淡くとろけるような唇。
亜麻色の重厚な髪は嘘のように風にゆるやかに踊った。
白く薄いシャマリの衣服はピタリと張り付いて彼女の細く長い肢体がわかる。
まるで作られた人工物、アンドロイドのように不自然で、幻想的な光景。

それを見て満貴は妙な気分になる。

「どうだ、言葉にできないほど美しいだろう?」

「満貴、お前、俺がシャマリをいくらで買ったかわかるか?」
「シャマリは海外の狂気じみた異常実験の末のゲテモノ商品や須藤のような劣化コピー商品とは全く異なる!」
「唯一無二の我々の最終形態の一つ」
「満貴、お前もポーランドの最優性ヒューマノイドの研究実験事故の話は聞いたことがあるだろう?」
「彼女はその流出した生き残り」
「彼女は完璧だ」
「満貴、シャマリはお前へのプレゼントだよ」

止してくれよ、と満貴は思う。

しかしこの言葉はどうやら本当らしく阿部はこの外国の女をなんと自分の養女にしてしまった。
阿部はとことんこの女に入れ込んでいるらしい。
だからこそ下部の前線や外部で人目につく輩の内には入れずに、自分の日の下に置かれない最果ての部署に配属されたというわけだった。
この異端者処罰専門の「アンティクリスト」へ。

そんなに大事な娘ならこんな危険な組織に置くなと自分は思う。
結局あの男はこのとびきりの人形を見せびらかしたかっただけなのだろう。

ああ、だからこそあの男はこの女を自分のもとに置いたのか、そう思い至って、満貴は笑った。

シャマリもそれを見て安心したように、にっこり微笑んだ。
そしてささやく。

「デモ町田サントイルトキ、私楽シイ」

シャマリの時々見せるむせ狂うかと思うほど濃厚で狂気的な雰囲気を満貴は気に入っていた。
それを感じる時、満貴は彼女とあの異様なカタコトの言葉ではなく、もっと高位のなにかで密に繋がっていられるような気がした。
同調を感じる。

弱肉強食、敗者淘汰、コレ皆自然ノ摂理ネ。
うーん、いつ聞いてもいい言葉。
幸福に包まれる気がする。
これこそ我々の存在理由ではないか。

そして満貴はシャマリが自分以上に危ういものをはらんでいることも重々悟っていた。
この女と自分とは空気を奪い合う者同士であると。
絶望的な状況下に置かれ、身動きをとるべきでもないのに、這いずり回り、わざと危険に身をゆだねるのを何より好む。
やがて二人は虫の様に、酸素を喰らい尽くして、お互いを道連れすることを夢見る。

両者はお互い牽制し合い、恐れ、好んだ。

この女はその造形そのもの、神の創造物であって人に非ず。
「アンティクリスト」---救世主。
罪深き輩解放す。

この男は人の贖罪者、神の一人子にして地に落ちたり。
「アンティクリスト」---偽メシア。
暗愚の魂導かん。

東の空は秒刻みで白みはじめていた。
二人はいつものように微妙な間を保ったまましばらく見つめあう。
妙な雰囲気。

「ンフフ」
シャマリはたまらずに吹き出した。
こんな朝っぱらの、歩道の真ん中で、自分たちは一体何をしてるんだろう。

満貴も自分たちのこのふしぎな関係に笑った。

そしてあれほど自らの消滅を望んでいた自分が、今こう願ってしまう。
二人の関係が永遠に続くことを…


朝日に逃げ場を失った夜の青い空気は二人を高らかに祝福して、消えた。





アンティクリスト

新約聖書に登場する偽メシア。
サタンの使者とされる強力な悪魔。
世界が終末を迎える直前に現れ、大きな奇跡によって民を誘惑しつつ真の信者を迫害する。
ゴグとマゴグに率いられた悪魔軍団を従え、預言者エノクとエリヤを打ち破る---


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エジプシャングールズ 第1話 秘薬エリクサー 全セリフ集+各ページリンク


古代エジプトが舞台のファンタジーweb漫画「エジプシャングールズ」の「第1話 秘薬エリクサー」の全セリフ集+リンクです。

はるか昔 混沌の時代 かつてこの地に栄華を極めた王国があったという---
それからはや幾千年 今その面影を残すは巨大な王墓とそこに眠る黄金のみ
エジプト新王国王家の墓
内部
シェス「ヤバイ」
「ダウジング反応しまくってる…!」
「ココ!ココに絶対トラップがー!!」
「ネチェルやっぱ止めよう!」「二人だけで墓荒らしなんかムリだってー!!」

シェス「ギャー!!」
ネチェル「あんたが震えてるだけでしょ!!ここまで来て後戻りはできないっつうの!!はやく立って!」
シェス「へい。」
ネチェル「シェス真面目にやってもらわないと困るの!なんだってここは普通じゃない 太古の罠が私たちをお待ちかねしてるから」
「そしてお宝もねv」

ネチェル「いいかげんにして!!」「なんなのそのしけた値段!!」
商人「そんなこと言ってもネチェルちゃんねー盗品モノにはこれが限界!最近じゃ取り締まりも厳しくなってきてるし」「さばくこっちも面倒なんだよねー」

ネチェル「いや今日という今日は絶対ゆずれない!これは本当にいい品なの!!」「なんだって私たちが命がけでジュセル王の墓から盗んできた物だから!!」
商人(ジュセル王---?)
(まさか…)
ネチェル「ムキー」
シェス「まあま いいじゃん このくらいでー」
商人(まさかこれが…?)
「……」
「ネチェルちゃんいい話があるんだ」「あの方はあんたらにとって悪くない客だと思うんだがな……」
ネチェル&シェス「?」


神官「確かにいい品だね あの商人が君たちにこの私を紹介したのもうなずける」
シェス「あのーひとつ質問いいっスか?」
「なんで神官様ともあろう方が」「こんな盗品なんかを?」
ネチェル「バカ!あんたお客様になんてこと言ってんの!!」
神官「ハハハ好きなんだよ 宝を集めるのが」
「かつて我々の先祖が極めた栄華をかいま見ているような気がしてね」

神官「確かにいい品だ 買うよ」「君たちの言い値でかまわない」 
ネチェル「キャー ホントですかーv」
「まったく今日はもうかっちゃったわねー」
シェス「ネチェルいいかげん金持つの交代してくんない?」「あれからだいぶ歩いたと思うんだけど」
ネチェル「それにしてもあの神官の家のコレクションすごかったよねー」
シェス「お偉い神官様みてーだから」「すごいもうかってるんだろ」
ネチェル「ふーん」
シェス「なーネチェル これから都までまだ長い それとあの商人に紹介料もはらってこないといけない」「そろそろ袋持つの交代してくれてもいいんじゃね?」「なーネチェルたのむって」「ネチェル聞いてる?」

シェス「ネチェルいい加減返事くらい…!?」
「へ?」「いない?」
「……」「あいつまさか…!?」
ネチェル(神官の館侵入成功…)
(すごー全部古王国時代の本物ばっか)(てっとりばやく目ぼしいものだけ盗っちゃおう)

ネチェル(うわヤバイ…よりもよってなんでこんなときに…!)
(見つからないうちにさっさとこんなとこおさらばしちゃおー)
(ん?)(あいつ棺おけなんか開けて何やってんの?)
(え?え?)(ちょっとちょっとやめてよね)(ミイラの包帯とるの!)


ネチェル「!」
(女の人…!?)
神官「彼女の名はメルエレト」
「私が唯一愛した人だった」「不幸にも死んでしまったがね」
ネチェル「!!」
(ヤバっ)(バレてる!?)
神官「まったく君には感謝するよ これで彼女は蘇る」
「君たちが売ってくれたこの蘇りの秘薬のおかげでね」
ネチェル「蘇りの秘薬…?」
神官「フフでもその前に君には死んでもらおうかな 金に目がくらんだコソドロが!」

ネチェル「!!」
「うそ」

ライオン「ガァ」
ネチェル(あのくそ神官)(ライオンなんか飼ってんじゃないわよ)
神官「メルエレト…」
「大丈夫」
「今度こそ」
「今度こそ本物だよ」
「今度こそ君を蘇らせてあげよう」

ネチェル(うそ…)(死ぬの?こんなところで)


ライオン「!!」
「ギャウ」
「ギャウ」「ギャウ」
「キャイン」「キャイン」
シェス「へへ」「たまにはオレのダウジングが役に立っただろ」
ネチェル「シェス!」

神官「メルエレト…?」
「……」
「……」
「くそっ」「やはりこれも偽物か!!」
ネチェル「待って!」「本物の蘇りの秘薬なんて存在しない!」
神官「なんだお前」「まだ死んでなかったのか」
ネチェル「確かに太古の昔ジュセル王は蘇生術の研究をしてたかもしれない」
「でもそれは死を恐れたから!だからファラオたちはあんなバカでかい墓や霊魂の不滅を信じてミイラを作ったりした!それは今も昔も変わらない!」「蘇りの秘薬なんて存在しないのよ!」
神官「だまれ!」

神官「お前らに何がわかる!?」
「彼女を失った悲しみが!?」
「彼女なしで一体どうやって生きていけばいい!?」
ネチェル「埋めてあげて」
「そんな姿じゃかわいそすぎるよ」
「彼女も」
「あなたも…」
どうか幸せになりますように…

エジプシャングールズ 第2話 蘇りの姫 全セリフ集+各ページリンク 前編


古代エジプトが舞台のファンタジーweb漫画「エジプシャングールズ」の「第2話 蘇りの姫」の全セリフ集+リンクです。

目覚めよ…
沈む陽が再び昇るようこの地に再び蘇り給え

「……」「ここは…?」
魔術師「千年ぶりに見る光景はいかがですかっ?」
「太古の姫君!」
「私はあなたを千年の眠りより目覚めさせた者」
「死の国の王オシリスの御使い」
「はじめまして蘇りしアンセナムン姫」
アンセナムン「……」

魔術師「以後お見知りおきを…」
ネチェル「どうよシェス このお宝地図の山!」「わざわざアブシールまで出張してなじみの情報屋に売ってもらったかいがあるってもんでしょ!」
シェス「……ずーーーっと思ってたんだけどさーネチェルお前って」


シェス「なんでそんなバカなんだよ!!?こんなん偽物か盗掘ずみの墓の地図に決まってんだろ!!こんなんに全財産使いやがって!!」
ネチェル「はっ!?投資よ!投資!!手あたり次第に探せばひとつくらい…!」
シェス「最近姿が見えないと思ってたらこんなもの買いにアブシールまで行ってたのか 勝手に!」
ネチェル「そーよ で最近どうなの?都じゃなんか変わったことでもあった?」
シェス「変わったことー?西の公園の井戸が壊れたり渡り鳥が帰ったり動くミイラが現れたりとかしたけどー」
ネチェル「ふーん」
「って動くミイラぁなんじゃそりゃ!?」

「お おい…」
「う うわー」「ひいぃ」
シェス「ホントホントオレも初めて見たときビビリまくりだったんよ」「突然動くミイラが現れて街の人たちが…」

「ギャーー!動くミイラだー!!」
シェス「そうそ あの時もこんな感じで」
「っておいっ!来やがったぜ!」「動くミイラ!!」
人々「ギャー!」「ミイラがー」
シェス「はやく外へ!!」

ミイラ「あーあー」
ネチェル「なんなのこの化け物…」


ミイラ「ああ」「あー」
「あああ」
ネチェル「いやあぁ」

魔術師「撃て」
「はっ!」
ミイラ「ああ」「ああ」
「あ?」
「あああ」

シェス「死んだのか…?」
ネチェル「……」「………グロイ…」
魔術師「皆様注目ーー」

魔術師「ハイご静粛ご静粛ーー都の皆様お騒がせどうも失礼しました!」
「いつぞやと先程の化け物は私が蘇生術を施す途中に逃げ出したミイラの成れの果て いやはやまったく失礼しました」


ネチェル「は!?蘇生術ー?」「何言ってんのこのピエロ」
魔術師「フフ」
「よろしいですかお嬢さん 私できるんです 人を蘇させることが…」
「なぜなら私は」
「神に選ばれし者!!」「神々の秘術を書き記したるこの『オシリスの黄金板』を天よりあたえられし魔術師!!!」

ネチェル「オシリスの黄金板…?」
魔術師「よろしいですかっ!?皆様!?私がこの黄金板に記されたる蘇生術を完成させたあかつきにはもはや死を恐れることもないのです!!!先程のミイラたちこそ失敗しましたが成功さえすればたとえ死して幾千年経ようとも生前と変わらぬ姿となって復活するっ!!」
「あちらにおわすお方!千年の昔に若くして亡くなられた悲劇の姫君 古王国第六王朝王女アンセナムン姫のように」
「美しく蘇る!!」

「よ…蘇りの姫…」
(美しい…)
ネチェル「ちょっと待って!」
「まさかあなたそのお姫様をミイラから蘇らせたって言いたいわけ!?」
「証拠は!?証拠はあんの!?あなたが蘇生術を使えるって証拠はっ!?」
魔術師「はぁーーー?しょーこぉー?」「あーらあなたも見たでしょう」
「あのミイラが生命を持ったのはなぜですか!?私が蘇らせたからです!」

魔術師「そう私こそ神の力を持つ者だからなのです…!」
人々「ま…魔術師様…」「魔術師様…!」
「魔術師様万歳!!」「魔術師様ーー!!」
シェス「ひめーv」
ネチェル「……うさんくせー」


「先より城下がうるさいのう何の騒ぎだ?」
「はっ なんでも千年前に亡くなられた絶世の姫君がこの世に蘇りなされたとか」
「蘇りの姫!?人が蘇るとはまことのことか!?」
「はっ城下中そのことでもちきりで…」

「ほう…」「ならば余はその姫とやらを見たまほし」
人々「魔術師さまーー私の死んだ息子を蘇らせてくださいませーーー!」「いえいえぜひ私の夫をーーー!!」
「魔術師さまーー!」「魔術師さまーー」

シェス「あれからというもの魔術師の館には連日長蛇の列 まったく魔術師さまさまだな」
ネチェル「絶対におかしい!」
「なんなのあのピエロヤロー!!人が蘇るわけないじゃん!!絶対インチキヤローだって!だいたいうさんくさいんだよ『オシリスの黄金板』とか!」
シェス「自分がなっとくいかないととことんつっかかるよなーお前…」
「じゃあ動くミイラはなんなんだ?もうあれから5体以上都に現れてるんだぜ?お前もその目で見たんだろ?」

ネチェル「動くミイラ…」
「なにか新種の生物じゃない!?」
シャス「でたらめ言うな」
人々「おっおい魔術師様が」「魔術師様が出てこられた!」
「魔術師さまー」「」魔術師さまー」「魔術師さまー」
護衛「コラよるなよるな!」
魔術師「どーもどーも出迎えごくろうさま」
護衛「魔術師様はお出かけなんだよ!」「とっとと去りやがれ!」
魔術師「いやしい貧乏人の皆様」


老婆「魔術師さまー」
護衛「おいコラ女!!」「何やってる!!」
老婆「どうか私の死んだ娘を蘇らせてくださいまし!!」
「魔術師様のお噂をうかがってはるばるマルカタからやってまいりました!」
「どうか娘を蘇らせて下さい!!」
「もちろんただとは申しません!家宝をお持ちしました!」
魔術師「ん?家宝?」

老婆「はい我が家に代々伝わる美しい赤石でございます」「聞くところによると遠くメソポタミアでしか取れぬ石だとか どうかこれで娘を…」
バリン
「あぁなんてことを!!!」

魔術師「アーハッハッハッこーんなきったない石ころで私が動くと思いましたあ?」
「私にはねえ!王侯貴族をはじめ名のある方々からあつーいラブコールが送られてるんですよ!!」
「『愛する人を蘇らせてくれるのならいくらはらってもかまわない』ってね!」
「なーにが悲しくてあなたら貧乏人のお相手をしなきゃなんないんですか!?」

護衛「さあさ貧乏人はどいたどいた!」「魔術師様の邪魔なんだよ!」
魔術師「まったく今日は王宮への謁見の日だというのにひどい時間ロスでした そうは思いません?」
「ねえ姫君?」

老婆「うっうっ」
ネチェル「シェス次の獲物が決まったわ 嘘か本当か知らないけど蘇生術の秘密が書かれてるとかいう『オシリスの黄金板』をあの最低最悪性悪魔術師からうばい取ってやろうじゃん」
「あのピエロヤロー絶対化けの皮はがしてやる」


「ほう…」
「ではそなたはオシリスより蘇生術の方法と力を与えられたと申すか?」「それがまことだとすればぜひとも余の先立った妻の復活を頼みたいものだが」
魔術師「もちろんにございます!!ファラオ!現在すべての迷える魂を救済すべく実験を積み重ねとります!!」「私の蘇生術が100%確実に成功する日ももう間近!そのあかつきには奥方様そして陛下はオシリス神の名の下に永遠の命を得ることでしょう…!」

ファラオ「それは楽しみじゃのう…そのための資金援助は惜しまぬからな!」
「しかしぞっとするほど美しいものよ…一度黄泉の国より帰りめされたお方は…」
「ぜひとも今宵ごいっしょ願いたいもの…」
王子「陛下そろそろお邪魔してもよろしいでしょうか?」

ファラオ「おぉおぉそうであったのう よいぞよいぞ」
「王子よ…」
王子「ウィーネフェル(なんと美しいことよ!)」
「はじめまして姫君 私はこの国の今の王子の位にある者です」


王子「しかしあなたはまさにお噂通りいえそれ以上のお美しさ!死の国より復活なされた神秘性もあいまってこの世の者とは思えぬ妖艶さまで醸し出していらっしゃる!」「二人のこの出会いはとても偶然とは思えません…運命というものを強く感じてしまうのですがいかがですか?」
アンセナムン「………………」
王子「陛下!」「決めました!」
「私はぜひこの方を妻にめとりたいと思います…!」
アンセナムン「え」
魔術師「Wonderful!!!」「それはすばらしい!!」

魔術師「選ばれたお二人による時空を超えたご結婚!まったくすばらしい!!」「ぜひとも婚儀の式は盛大にあげることにいたしましょう!!」
「そうと決まればさっそく明日にでも」「このおめでたい知らせを国中にお触れになり式の準備に取りかからねばなりません!!」
「ねぇファラオ?」
ファラオ「おぉおぉそうじゃの…」

ファラオ「すぐにそうすることにしよう…」
女たち「王子何度目?」「さぁ」
アンセナムン「………」
魔術師(王子との結婚とは…まったくなんという幸運…こうまでことがうまいほうへ運ぶなんて…)
(あぁ外のものがこうまで愚民ばかりであると知っていればもっと早く『白の神官』を抜けてしまえばよかった…)

「ほらはやくしなさい!魔術師様がお帰りになられたわよ!」
メイド「あ」「ハイ!」
「すぐに戻りますんでー」


アンセナムン「あなた…」
「いつもの人じゃない…」

ネチェル「……」
「どうもあやしい者でーす★」
「まったくどれだけもうかってるんだかたいそうなお館に住んでんのねーあなたと魔術師は!ここまで来るのにもう迷いまくり!」

ネチェル「それじゃ単刀直入に聞くけど」「あなた一体何者?」
「まさか本物の古王国時代の姫ってワケあるまいし」
アンセナムン「……おっしゃっている意味がわかりません…あなたこそどなたなんです?」
「私はアンセナムン 第六王朝エジプトの王女…少しは口の利き方をつつしんでいただきたいです」

ネチェル「王女だって!?そんなわけないじゃん!!」
「じゃああなたは死んでから千年後の今になって」「あの世から蘇ったって言いたいわけ!?」
アンセナムン「本当です…私は魔術師様の手によって再びこの地に蘇らせていただいたのです…」
ネチェル「じゃあ証拠は!?」「証拠なんてどこにもないんでしょ!?あなたが古王国時代の人間だっていう証拠も!死んでから生き返った人間だっていう証拠も!」
「あなたは自分の存在が証明できるの!!?」


アンセナムン「自分の存在…?」
「私何も覚えてないんです…」「生前のことも…死後のことも…気がついたら魔術師様の神殿にいて…」
ネチェル「……」
(やっぱりねこのペテンヤローが)

アンセナムン「それから私…」
ネチェル「ん!」
「ちょっと待って」
アンセナムン「?」
ネチェル「このピアスどこかで…」
(赤い---)

ネチェル「なんで」「なんであなたがこれを…?」
「姫様どうかなさいました?」
「婚礼衣装の仮縫いのご用意が整いましたが---」
ネチェル「婚礼衣装?」
アンセナムン「私結婚するんです」

ネチェル「結婚っ!?誰と!!?」
アンセナムン「この国の王子と…」
ネチェル「………」
「はっ!?」
「なんじゃそりゃ!?」


魔術師「ほらほらお酒じゃんじゃん持って来て~!!」
「王子と姫との結婚話がうまくいけばこっちには王室からたんまり結納金が手に入る~~~」
「おめでたいおめでたーい!!」
シェス「なんなんだよバカ騒ぎしやがってうるせーなー」

シェス「ネチェルのヤツ一人で魔術師の館に潜入してオシリスの黄金板盗って来いなんてふざけたこと言いやがって…」「黄金板なんてどこにも…」
「お」
「おぉ!」
「なんじゃココ!!」

シェス(怪しい……!!)(怪しすぎる…!!)
(絶対なんかあるココ!)

シェス「はぁー気持ち悪い置物やら剥製やら…ネチェルは怪しい物は全部盗って来いって言ってたけど」
「どうせななら」「お宝がいい!!!」
「ひぇぇキモイよこの骨…」「つかれたー」「くさっ この壷くさっ!!」

シェス「でけー織物 高そー」「これおみやげに持って帰ろうかなー」
「スカラベに変な動物…?」「一体なんのマークなんだコレ」


魔術師「これはね かつて私が忠誠を誓った組織」「うるわしき『白の神官』の紋章…」
「ところで君はこんなところで何をしているのかなーぼくー?」
シェス(-----!!!)

シェス「ギャッ」
護衛「クソガキがっ!!思い知ったか!!」
「魔術師さまー」
「コイツどうしますー?」
魔術師「あーらちょうどいいじゃない」

魔術師「次のミイラ役に…」
「どいつもこいつもゴツイ男ばかりじゃつまらない」
「たまにはこれくらいのガキになってもらいましょ!」
「じゃ処理お願いねー」
護衛「はっ」

シェス「いてっいてっ」
「いたいつってんだよ!!!」
護衛「うるせえ!!」
「ぐだぐだ言わずさっさと歩けっ!!」
「ほーら見えてきただろ?」
「まさに生き地獄 お前の末路が…」
「ようこそ」

護衛「ミイラ製造部屋へ…」
「これを見て生きて帰れると思うなよ お前ももうすぐあいつらの仲間入りってわけだ」
「足の腱を切り舌を切りそして…」
「これでね…!!」



つづきは近々また…

ゴッドブレス




尊敬する磯野コシカケ様のweb漫画「ゴッドブレス」の企画に参加させていただいたときのイラストです

  

別バージョン↓

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