盲目王子と悪魔 その5
従者の少年が王子様を見つけることができたのは、もう日が高くのぼってしまっていたころでした。
少年は王子様に泣きじゃくってはわび、そしてもうこんなことをなさらないように頼み込むのでした。
いつもなら不備を見つければここぞと少年を責め続けなさる王子様が、今日はやけにご機嫌よろしいようで、少年に素直に従われるのでした。
少年はそんな王子様の優しさが好きでした。
村に戻るとそこにはいつものように同じ日常が待っていました。
少年は王子様をお着替えをすますと、王子様の不思議なくらいひどく汚れたお召し物を持って、洗濯とお食事の準備をするために台所へと降りていきました。
少年はここから北へ遠く離れた貧しい農村で生まれました。
少年は物心つくとすぐに家の外で中で働かされました。
少年は一生懸命働きましたが、それでも家は食べていくことができず、とうとう少年は親の手によって口減らしとして売られてしまいました。
少年が王子様と出会ってもう何年になるでしょうか。
はじめてお会いしたころの王子様は、誰とも心を開かず、一日中暴れまわり、泣き叫んでおられました。
少年以外の誰もが王子様の相手にすることを嫌がり、次々と王子様のもとを離れていきました。
そしてみんな口をそろえてこう言いました。
あの王子はもうだめだと。
少年は王子様が好きでした。
なぜならば、王子様は自分にだけは、なんの気がねなく、真実の心で接してくださると思っていたからです。
王子様にとって自分は、特別な存在なのだと思われました。
こんな卑しくちっぽけな自分を必要としてくださるお方は、世界中で王子様だけだと確信していたからです。
だから振り返って、王子様が刃物を自分に振りかざそうとしておられるのを見るのは、少年にとって心臓がにぎりつぶされるほどの驚きでした。
刃物は少年の脇を通ってすぐ横にぐさりと突き刺さりました。
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